教育美術・佐武賞

教育美術・佐武賞について

 「教育美術・佐武賞」は、公益財団法人教育美術振興会(当時:財団法人教育美術振興会)の初代理事長として、長い年月ひたすら美術教育の振興に心をくだき、生涯をかけて大きな力を尽くされた佐武林蔵先生(昭和43 年没)のご寄付によって、昭和41(1966)年に設立されました。
 現場の先生方の実践に光をあてることにより、子供と共につくりあげた優れた授業を広め、指導者の育成と、図画工作・美術科教育の発展に貢献することが本賞の狙いです。そして現場の先生方が日々の実践の悩みから見出した課題や、新学習指導要領の中から見つけた課題などを解決するために、どのような実践をしているかを大事にしています。
 本賞が契機となって、学校現場における実践活動が活性化し、研究の輪が一層広がることを願っています。

第47回 教育美術・佐武賞 佳作賞

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〈題名〉
中学校美術科の教科内統合カリキュラムに関する研究

〈執筆者〉
藤原 智也 (ふじわら ともや)
勤務先:岡山県倉敷市立船穂中学校 講師 (応募当時)
※前任校 岡山大学教育学部附属中学校

〈概要〉
 本研究は、1980年頃から行なわれてきた教育改革を統合カリキュラムとして捉え、学校教育における造形美術教科の立場からその課題を検討し、それを踏まえて行った勤務中学校での実践を検討するものである。人間中心的教育への転換とともに模索されてきた統合カリキュラムは、児童生徒の主体性の問題を基点とし、教科においても生活世界との密接な関連性に根ざした総合的な学習コンテンツの開発へ課題が焦点化されてきた。統合カリキュラムは教科教育学研究の立場から教科内統合と超教科統合の二つのアプローチに区分できる。そこで、超教科統合アプローチの限界を指摘し、教科内統合アプローチの意義を論じた。
 教科内統合については、教科固有の共通性原理として色や形などの形式的側面と感情やイメージといった内容的側面の相補的関係を挙げた。それに基礎基本としての役割を付与して〔造形美術の通底性〕とし、カリキュラムの主軸に据えることで多様な題材を超えた学びのつながりを保障できるとした。他の教科では代替不可能な、視覚と触覚を介して得られる色や形などによる芸術体験の質的固有性は、教科の成立基盤の要となるものである。
 これらをもとに、造形美術の色や形などと感情やイメージの統合をはかりうる方法として整備した比較による鑑賞教育方法論を挙げ、学習パラダイムを相対化しつつ〈発見―構成〉学習と位置づけ、その特質を論じた。そして、この比較鑑賞をカリキュラムや題材の集束的局面に位置づけた、勤務校における平成20年度入学生を対象に編成したカリキュラムとその実践についてその概要を示し、量的な検証を行った。結果、比較分析によって、造形美術に対する「価値」への意識の向上が確認された。またその意識内容を検討した分析によって、教科内統合を反映した色や形といった造形美術を通底する学習が、未来志向性や社会性、造形によるコミュニケーションなどの基盤となっていることが示された。

※論文は下記よりダウンロードできます。

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